当てのない旅~元パン屋の放浪記 一日目 ①旅の始まり
5年勤めたパン屋を辞めた
理由は「起業したいから」、「資金を貯めたいから」なんてそれっぱい具体的なものを上げることもできるが本質的には違う。人に退職理由を説明する時に具体性を求められるからただ言ってるだけだ。
本当はただ自由が欲しかっただけ。役職を貰い、給料も生活に困らないぐらいにはあり、体力仕事だがうまくやりくりすれば何とか体も壊さず働き続けれるただろう。
そんな状況に甘えそうになっている自分が許せなかった、この先続くかも分らない安定にしがみつこうとしている思考が許せなかった、気持ち悪いとさえ思った、だから全部捨てることを選んだ。
安定した収入を捨て、安定した居場所を捨て、手に入れた地位を捨て…そうして手に入る権利が欲しかった、自由になる権利が。
今は愛知県の某自動車工場に期間工員としての就職が決まり、そこで起業に必要な資金と準備をしながら3年程過ごするつもりでいる。
しかし、パン屋を辞めても自分の社会での役割は食品製造者であるという気持ちに変わりは無く、じゃぁその上で「自分にしか果たせない仕事ってなんだろう?」と考えたときに浮かんできたのはトレイルランナーとしての自分・旅人としての自分だった。
思考の結果→トレイルランナー・旅人×食品製造者=行動食専門の製造会社
という発想に至った。
なので仕事を辞めて次の仕事が始まる間に出来た自由期間、本を読んだり・経営者向けセミナー通いだったりに精を出して過ごしていた。
前置きが長くなったが、以下現在放浪している理由から話していきたい。
思い立つ
5年間自分の足となってくれていたバイクを廃車にした(理由は下の記事を参照)、つまり移動手段が無くなったのだ。田舎で車・バイク等の移動手段を持たないと言う事は、どこにも行けない事を意味する。
仕方がないのでそれから2~3日は走ったり、ブログ更新したりして過ごしていたのだが、それから追い打ちをかけるように自宅のネット環境が使えなくなった(理由は割愛する)。
「このまま家にいると貴重な時間を無駄に余らせてしまう」
愛知移住までの約3週間出来れば少しも無駄にしたくはない。そこで、「どうすれば無駄と思わないのか?」という所で自分の考えをまとめてみた。
- 時間がある時にしか出来ないことをしたい
- ウルトラトレイルに向けての練習がしたい
- 旅したい・ふらふらしたい
- 面白い事がしたい・刺激が欲しい
考える内に自然と1つの答えに集約していった。
「旅に出よう!」
車も電車も自転車も使わない、歩きだけの旅に。
旅立ち
思い立ったが吉日とさっそく準備を始めた訳だが、緊急時用の装備は常に用意してあるし、ザックは登山用の60Lの大きいサイズがある、その他の物は道中必要になった時で十分間に合う。
「あれ?もう出発してよくね?」
トレイルランの大会に遠征したり、バイクでのキャンプツーリングや登山なんかで色々動き回っている内に随分と旅慣れしていたようで、着替えも詰め終わり思い立った当日に出発準備完了してしまった。
その日の晩に家族と友達に旅立つ報告を済ませ、翌日雨が降っているのも構わずに出発した、ワクワクの衝動を抑えられなかった。
止まない雨
出発してから数時間が経過しても雨が止む気配はない、レインウェアに登山靴共にGORE-TEX装備であるため、内部への浸水は免れているがとにかく歩き難く体力が奪われる。思えば今年は参加したトレイルラン大会の3つ共が雨天開催だったし、年の最後までつくづく雨男だ。
しかし辛い状況というのは嫌いではない、苦しくてもあがいて目的に向かって進んでいる時にこそ生きている感じがする、トレイルランしているときと一緒だ。
だからまぁ…止まない雨もそんなにそんなに悪くない
…とか思いながらもトンネルに入って涼しい風にあたると、湿り気もとれて非常に気持よかった。
色々強がってみたけど、なんだかんだ言って
やっぱり雨に打たれないのが一番いいや!
夜道を行く
雨も小降りになり、天気もだんだんと落ち着いてきた頃。辺りもだんだんと暗くなり始めてきた。
ヘッドライトとハンドライトを準備して、大村市に向かうため三浦街道に歩を進めてい行く。
10km程の街道に人の姿は殆どなく、たまにすれ違う車以外は暗闇と静寂が辺りを満たしている。
街灯も殆どない道を黙々と歩きながらライトの重要性について1人で再確認していた。ライトを試しに消してみる、少しの段差が見えずに躓きそうになる。目が慣れれば歩けないことはないが危険な事に変わりは無い。
危険の察知と共に、すれ違う人や車に向けて自分の存在を知らせる役目も大きいところで、防護柵も無い夜の歩道をライトを点けずに歩けば、いついかなる接触事故が起きてもおかしくない。
とかそんなことを考えながら歩いていると、藪の中からドス!ドス!ドス!
急な音に驚きのあまり硬直してしまった、「そうかライトの重要性これもあったな」1人納得する。物騒な物音の正体はイノシシ、姿は見えずともあの重厚で軽やかな足音は奴以外はありえない、ライトの光に驚いて林の奥に逃げていく足音だったのだ。
「ライトを持たないで夜道は絶対に歩かないようにしよう……」
リアルな身の危険に心底そう思い、跳ね上がった心音を感じながら固く決意した。
非日常
街道から街の灯りがしっかりと見える所まで来た。内にいると余り気付かないが、こうやって暗い街道から眺める分には結構綺麗な夜景だったりする。徒歩だと時間がゆっくり流れるので、そういった細かいことに気付きやすい。
車で通りすぎる時は早すぎて気付けていなかっただけで、心を打つほど綺麗な物というのは、意外とそこら中に存在しているのだ。
そんな情緒に耽りながら歩いていると、約10kmの街道を抜けついに市街地に辿り着く。そして、先ほどまでの夜の街道は非日常を感じさせてくれたが、市街地に入るとまた違った非日常を感じることになる。
「人の視線が気になる」
すれ違う人達の不審とまではいかずとも、街に不釣り合いない出立ちへの奇異の視線を感じる…というか見られてる…間違いなく。
その時の格好は、今からでも山を縦走できる装備にオレンジのレインウェア、時刻も20時を回った市街地には完全に異質な存在。
目立つ!どうやったって目立つ!
レインウェアを脱げば多少ましにはなるだろうが、本日泊まる予定にしているネットカフェまで後5kmで着く。疲労もそこそこあって早く辿り着きたい一心から、視線に気付かないフリをしてひたすらに歩き続けることに決めた。
初日の終わり
ファミレスで夕食を済ませ、目的のネットカフェに到着。シャワーと着替えを済ませて、早々に就寝準備に入る。
「明日も早い寝よう」
自由な旅なのだからゆっくりすればいいのだが、そんな気持ちよりも「少しでも沢山歩こう」という気の昂りが勝って頑張って寝ようとする。
だが、なんせ気が昂ってるもんだからなかなか寝付けない。
仕方がないので明日の予定や装備を確認したり、ブログを書いたりする内、やはり疲れていたのかいつの間にか眠っていた。
こうして初日は何事もなく終わった、初日は……
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